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ケヴィン・ジョーンズ展
「ステラ レイズ(星光線)」
2018年8月10日(金)~26日(日)
15:00~20:00 最終日18:00まで
13日(月)、18日(土)、20日(月)、21日(火)休廊
レセプション;11日(土)17:30より
この「ステラ レイズ(星光線)展」では天文学、高速度写真、化学の探査を通し、ある種の一過性、到達不可能性について考察した新作が展示される。
化学的なミクロ世界から天文学的なマクロ的なものへ移動する事で、移ろい行く束の間の瞬間は様々な形で捉えられる。自己言及というタイトルの作品は高速度撮影カメラで、溶解していくイルージョンを提供できるよう改造されている。スローモーションでしか見ることのできない状態の装置を展示することで、捉えどころのないもの、到達不可能なものとは何であるかを、この作品は捕獲しているのである。
天体図を使った作品はこの不可解な自然世界を引き出している。その中には タイヤチューブの上に再構築された重力場、星座表があり、ブラックホールや天文物理学が喚起される作品が含まれる。一方立体作品「ハイパーハット」が表現しているのは液晶ディスプレイスクリーンが天体図の動画に見える、広大な宇宙の交差点で切断されているシルバープレート製の帽子を被った観測者である。
この二つの作品は、広大な夜空を人間的レベルにもたらし、手にとって感じることが出来る形式で展示することが宣言されている。
また、化学や大衆文化に関連付けれた図像について考察している作品もあるが、それは意味体系を逸脱するイメージの組み合わせることによって表現されている。畢竟、この「ステラ レイズ展」で展示される作品は不合理と周囲の世界を理解しようとする我々人間の企てに対する、私自身の興味に対する継続した探求であると言える。
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ケヴィン・ジョーンズの作品は私たちの内部と外部に存在する不条理と不合理、そして定理と科学的思考の絶妙なコンバインとして成立している。
たとえば数学は現在の科学にとって正確な基準とされているが、零や無限なる記号を数値的次元に設定している段階で不可思議としか言いようがないし、フィボナッチ素数のようなすべて解明されていない法則が多数存在している。
大体において現象は数値的に割り切れるものではない。それでもアナログ時代は去りデジタル時代に入っていて、とりわけ情報化は加速しネット環境に移行している。
しかし科学というものや観測というものがリアリティを増大させればさせるほど同じだけ疑問符の数も増えていく。
ケヴィン・ジョーンズはアートの文脈上で存在論的に科学と神秘に関して言及し、独自の詩的世界を発生させているのだ。
(美術評論家/本展ディレクター 森下泰輔)